2012/10/11(木)にあじびホールで行われた『第4回ユニバーサル都市セミナー 世界を変えるユニバーサルデザイン』に参加してきました。
詳細説明はユニバーサル都市セミナー資料(PDF 400KB)をご参照ください。
(これぐらいページ作れよ!!!と声を大にして言いたい)
九州大学の中でも、僕の母校の大橋キャンパス(元芸工大)よりな6人先生たちが、それぞれの研究成果や実施してる活動、プロダクトを発表されるセミナーでした。
どれも幅広いデザインだったり、プロセスが面白かったり、もう僕らの身近なものになっていたりと大変刺激を受けた内容でした。
かいつまんでご紹介。
高島市長のビデオメッセージ
会場にはアクセシビリティに配慮されてました
- リアルタイムな字幕表示モニター(4人体制のリアルタイムなタイピング)
- 壇上での手話通訳(2人交替制)福岡市のユニヴァーサルデザイン事例として地下鉄七隈線が紹介されてました。
地下鉄七隈線は、世界のデザイナー達からも評価が高いと言われてるそうです。
そういう目線でぜひ地下鉄七隈線を改めて見てみるといいかも!
森田昌嗣 教授:『樹立の森 リハビリウム』の研究・開発
単調なものほど辛いリハビリを、ゲームを通じて
楽しいリハビリにしようというプロジェクト。
シリアスゲームの要素が取り入れられてて、
ツールや見方を変えることで、
「辛い→楽しい」に変えた良いデザインでした。
(このゲームを試してみたくなりましたw)
ランキング機能とか。
これが実は思いもよらない効果があって、
老人ホームの中で、意地の張り合いみたいな現象が起きて、
誰かおばあちゃんがランキングを更新すると、
「あの人には負けられない!」
と別のおばあちゃんがすぐに塗り替える、そんないい競争が起きてるのだとかw
最初はwii、今はKinect
- 最初はwiiでゲームを作った→ × 健常者向けに作られたwiiはリハビリが必要な高齢者にとっては難しい
- wii fitを使って登り降りのゲームを作った→ × wii fit本体の3cmの段差がお年寄りにはやはり危なかった
- kinecktで現在はゲームを制作してる→ ◎リハビリに向いてる。多人数でもできる。カメラが意外な使い方もできてる。
実際のゲーム動画や、老人ホームでの利用風景も流されました。
一番きついリハビリといわれてる「起立訓練」という立って座るだけの一番単調なリハビリを、
シリアスゲームの取り組みで数点ポイントを挙げられててました。
分かる範囲でメモ。
- Levelシステム → × 効果なし
- おじいちゃん「Levelが上がって何の意味があるん?」と不評
- ランキング → ◎ 予想外の効果
- 前述の良い意味での競争効果が生まれた
- メダル、アイテムコレクション → × 効果なし
- おじいちゃん、おばあちゃん「メダルって何ね?」「これ集めてどうなるん?」と不評。コレクションする楽しさがなかった
- 改善策でメダルの絵柄を老人ホームのスタッフさんの顔写真に変えた
- 劇的に競争が生まれた!
- 顔写真はkinectで撮影できる
- スタッフさんが仮装して写真を撮るようになって、スタッフ感でも盛り上がりが出てきた
- スタッフ「実は僕が女装したメダルが隠されてるんですよ」おばあちゃん「え、そうなの?!見たい!見せなさいよ!」
スタッフ「ふふふ、リハビリゲームをクリアしてたらゲットできますよ」
と、思わぬコミュケーションにも繋がってる
- サウンド → ◎ 大事な要素
- BGM :元気が出るBGM
- 応援の声:小さな女の子の可愛い声で「ガンバレ〜」「もう少し〜」ときつい時に応援するようにしてる
- 実は松隈さんの愛娘さんの声だとか。もうめちゃめちゃ可愛い声でした。
村木 里志 准教授
ユニヴァーサルデザインと心身機能の維持・向上
〜 高齢者や身体障がい者の体力はQQLの向上を目指したプロダクトや生活環境 〜
科学技術の発展は、筋力の衰えを招いているのでは、という問いかけから始まりました。
(確かに僕も思い当たるところが。。。)
ジャパニーズ・パラドックス
ジャパニーズ・パラドックスとは、
世界的に見て日本人は転倒による骨折が少ないという統計を指してるそうです。
和式特有の生活スタイルに由来してるとのこと。
西洋のソファー、ベット、洋式トイレよりも、
和式の畳に座る、布団を敷く、和式トイレの方が、
筋活動が高いという興味深い内容でした
住宅設備のバリヤフリー化も、実は問題があって、
バリアがある方が筋力を維持できてるという調査結果もあったそうです。
今後の住宅設計では、
『老後を見据えた50年後の将来を考えたデザイン』
+『身体筋力を高めるデザイン』
=
新しいユニヴァーサルデザイン
の考え方が鍵になるとのこと。
森田 昌嗣:パブリックデザイン研究 (JR博多駅博多口駅前広場)
パブリックデザイン = 引き算のデザイン + 魅力のデザイン
実際に皆さんが利用された事があるだろう、
2009年3月にリニューアルオープンされた博多口駅前広場のデザインを事例に、
プロセスや考えられたところ、工夫されてる所などを紹介してもらいました。
- 人間中心のデザイン
- 部分から全体へ
- 関係のデザイン
須長 正治准教授:カラーユニバーサルデザインへの取り組み
Color UDのソフトをデザイナー、学生向けに開発中とのことでした。
平井 康之准教授:こども×くすり×デザイン
ユーザー参加型のデザイン手法がとても興味が湧きました。
実際に子供たちに「くすり」を考えてもらって、それを実際にプロダクトデザインまで落とし込んでいる事例を紹介。
子供達の自由な発想が思わぬプロダクトを生んでいるプロセスに見習う点が多くありました。
キーワード:インクルーシブデザイン
- 課題マッピングでプロセスを可視化
- 課題の可視化→プロトタイプデザイン
栃原 裕 主幹教授:住宅温熱環境のバリアフリー化
ヒートショックって知ってます?
- 日本は世界で一番「住宅内不慮の事故で溺死率」が高い(浴室での溺死)
- 福岡は全国の中でもワースト上位
- 寒そうな北海道では少ない
- 逆に世界では転倒の骨折率が高い
- 世界で発表すると「Why?」「CRAZY」と言われるらしいw
- 問題は脱衣所と浴室との温度差による血圧の急激な変化
- 浴室暖房は福岡では一般的ではない
- 浴室のバリアフリーは手すりだけでなく、暖房を導入して、室温のバリアフリーも重要な要素
雑感
どれも統計による裏付けもあったり、ユーザーの声を聞くことや、実際に調査すること重きを置いてる印象でした。
私たちはついつい結果のプロダクトのみに目が向きがちですが、
そのデザインのプロセスがいかに大事か、いかに人間中心に考えるかが大事かを改めて考えたセミナーでした。
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